空港にて/村上龍

空港にて (文春文庫)
たぶん初めて自分で買った村上龍、かも。短編集です。なんとなく一貫して旅立つことが出てくる。ワタシの苦手な龍作品の血とか脳漿とかはナイです。でも濃い。濃いいいいい描写が続きます。男だったり女だったりのそれぞれ一人称の主人公たちが、目にしているモノ考えていることをものすごく濃く語る形式なので、とにかく情報量が多くてみっしり詰まっている話が続く。でも読み終えてみると重くないのは筆力か。やっぱり。閉塞感を感じる話が多いです。わかってる、逃げ場はないし、これが現実だし、受け入れている、だけど、という。
最後の一編が表題にもなっている「空港にて」。「相手が意志と好意でやっていることについて、どうしてそんなことをするのかと聞くのは甘えだ」の一文に赤面。ああ。最近もてあまし気味になりつつ抱えている考え事について思いめぐらし、結局こういった感情ごと自分なのだから受け入れるしかないのだと自覚する。ここでワタシも。