日本近代建築の歴史/村松貞次郎
専門書、ではあるんですが、名著。で、長らく絶版だったものが、「岩波現代文庫」で復刊されたものです。おめでとうございます。1977年発行、まだまだ「近代」が「歴史」となりきっていなかった時代(今だって受け取り方はいろいろですが)からの先駆者であった著者の近代建築史論。元々技術史や「人」に焦点を持ってきた研究のイメージが強い村松先生らしく、西洋文化・様式・技術の取り入れ方の日本人ならではの特徴や、黎明期の建築界を担った人々がいきいきと描かれ、和風邸宅への視点が欠けているという指摘なども、時代を感じさせず普通に面白かった。
解説を弟子であるところの藤森照信氏が担当。建築史研究者の流れ…関野克→桐敷真次郎・村松貞次郎、太田博太郎→稲垣栄三、というまあ東大なんですけど、の話とかいう些末なところを興味深く読んでみたり。よくわかってないものな、ワタシ。うちの先生や陣内秀信さんなんかは稲垣先生の弟子なので、じゃあワタシは広ーい意味では太田博太郎先生の曾孫弟子ですか。とか。