わたしの小さな古本屋/田中美穂

わたしの小さな古本屋?倉敷「蟲文庫」に流れるやさしい時間

わたしの小さな古本屋?倉敷「蟲文庫」に流れるやさしい時間

倉敷の蟲文庫には一度だけ行った。ずっと行ってみたかったお店でした。「苔とあるく」も、この本も、静かで気持ち良い好意にあふれていて嬉しい。ムシ文庫オリジナル手提げは愛用している。

どうせ、あちらへは手ぶらで行く/城山三郎

城山三郎が亡くなる近くまでつけていた手帳のメモをまとめたもの。奥さんが亡くなられたときのことなども。何かで目にしてた「そうか、もう君はいないのか」を読んでみたいな、と思っていて、先にこちらを手にしてしまった。
編集者の手は入っていますが、まとめられるつもりで書かれたものではないので、正直すこし読みづらい。でも鬼気迫るというか、手触りのようなものもそのまま感じられる。ラストに、容子夫人と初めて出会った年の手帳からの抜粋がある。

どうせ、あちらへは手ぶらで行く (新潮文庫)

どうせ、あちらへは手ぶらで行く (新潮文庫)

猫を抱いて象と泳ぐ/小川洋子

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

猫を抱いて象と泳ぐ (文春文庫)

チェスの話。チェスのルールを知らなくても楽しめますが。久しぶりの小川洋子ですが、相変わらずすこしの不気味さ。深い水の底をたゆたうような空気感。

断絶への航海/ジェイムズ・P・ホーガン 訳:小隅 黎

すっかりまた放置していた。
…最近読んだ本を、タイトルだけでも記録しておこうと思います。2月の日付でとりあえず…。

断絶への航海 (ハヤカワ文庫SF)

断絶への航海 (ハヤカワ文庫SF)

ホーガン、一時期はまってた、という話をしたら飲み友達Y岸くんが貸してくれました。ご都合主義的ではあるけれど、ホーガンはハッピーエンドというか希望を持たせる結末が気持ち良いです。

大正二十九年の乙女たち/牧野修

twitterでどなたかが書かれていて気になったので買ってみた。牧野修というのは普段はホラー作品を書いている方だそう。この「大正二十九年の乙女たち」ではちょっと猟奇的な描写もあるけれど、大部分は時代モノ青春小説というかなんというか。
大正二十九年という架空の時代…昭和だと十五年にあたる、戦火が迫りつつある時期を設定して、逢坂女子美術専門学校という寄宿制の女子校を舞台とする4人の少女のおはなし。老舗の娘だったり社長令嬢だったり男性をも打ち負かす武道の達人だったり不治の病に冒された美少女だったり、何かと「天才的」なひとがたくさん出てきたり、あとは街を賑わす猟奇殺人の噂と謎解きと。絵画に打ち込む学生生活と、章ごとに視点を変えて語られるそれぞれの私生活と、殺人事件。ちょっとなんというか漫画的な人物設定や話の運び方で、すんなり読めたとは言いがたいけれど、読み終えて、スッキリする感じはあるかな。漫画にしたらいいのではないかいな、とも思う。

深夜球場/赤瀬川隼

野球にまつわる話をまとめた短編集。赤瀬川隼の小説、初めて読みました。読者層は中高年男性な感じ?と思うのは、20数年前に発表されたものを今読んでいるから感じる感想かしら。
寡黙な選手のプライベートの話、深夜の球場でのアルバイトと元選手だった老人の話…ドームではない後楽園球場と思われる球場や実際の川崎球場、また架空のチームだったり実際の選手だったり、フィクション、ノンフィクションが入り交じっている感じです。20数年前の執筆ということで、今とは違う、プロ野球がまだとても人気のあった時代。もちろん人気のないチームというのはあったけれど、スター選手は本当に国民誰もが知っているスターで、優勝の行方に誰もがやきもきして。
ちょっと古くさいのは当たり前だとして、親父な趣味だなと思いながらもプロ野球ファンとしては楽しめる一冊でした。中ではおじさんたちの野球にまつわる思いと知休荘という木賃アパートが魅力的な【梶川一行の犯罪】が好きかな。

深夜球場 (文春文庫)

深夜球場 (文春文庫)